詩人で劇作家の寺山修司と作家の吉行淳之介がこんな話をしているのを見つけた。
吉行 女性に関して、地理派と歴史派とあるというのは、寺山さんがいい出したんだろう。
寺山 そうです。
吉行 つまり、駅弁でも買うように、手広くやるのが地理派で、歴史派というのは、一人の女を深く追究するタイプであると。それで、おれのことを地理派だといっていたけど、あなたはどっちですか。
寺山 ぼくも地理派ですね。
吉行 そうかねえ。
寺山 日本は、歴史派の漁色家を非常に尊ぶ傾向があって、地理派はあまりはやらないですね。
吉行 しかし、歴史派は相手が一人だから、漁色ということにはならないだろう。
寺山 いや、一人の女から百人分を引き出すという意味では、やっぱり一種の漁色ですよ。
これも一つの才能だと思う。
吉行 おれ、わりにその才能もあるんだよ。
寺山 それじゃ、社会科全部だな、地理も歴史も(笑)。
『やわらかい話─吉行淳之介対談集』(講談社文芸文庫)